Android オープンソース プロジェクト(AOSP)のビルドと、対象のハードウェア固有バイナリを使用して、Nexus デバイスと Pixel デバイス用のビルドを作成できます。利用できる Android ビルドと対象デバイスについては、ソースコード タグとビルドをご覧ください。
DragonBoard 845c、HiKey 960、Khadas VIM3、Qualcomm Robotics Board RB5 の Android 評価ボード用のビルドも作成できます。これらの評価ボードにより、非モバイル コンポーネントのベンダーも、ドライバを開発して Android リリースに移植できるようになります。評価ボードを使用すると、アップグレード作業が容易になり、新しい Android デバイスの製品化までの時間を短縮できます。また、ODM や OEM が幅広い種類の互換コンポーネントを選択できるようになることで、デバイスコストの削減が可能になり、コンポーネント サプライヤー間のイノベーションも加速します。
Google は、DragonBoard 845c、HiKey 960、Khadas VIM3、Qualcomm Robotics Board RB5 の Android 評価ボードをサポートしています。AOSP を通じてこのような評価ボードのカーネルソースやボードサポートが提供されるため、デベロッパーは、OEM 負担の少ない形で周辺機器ドライバの開発やデバッグ、カーネルの開発といったさまざまなタスクを簡単に行うことができます。
DragonBoard 845c
DragonBoard 845c は RB3 プラットフォームの一部であり、96boards.org から入手できます。
図 1. DragonBoard 845c
ユーザー空間のコンパイル
DragonBoard 845c に Android をダウンロードしてビルドするには、以下のコマンドを使用します。
以下のコマンドで、Android ソースツリーをダウンロードします。
repo init -u https://android.googlesource.com/platform/manifest -b master
repo sync -j8
現在のベンダー パッケージをダウンロードします。
./device/linaro/dragonboard/fetch-vendor-package.sh
AOSP をビルドします。
. ./build/envsetup.sh
lunch db845c-userdebug
make -j24
ローカル イメージのインストール
db845c を Fastboot モード(Fastboot mode)でブートします。
次のコマンドを実行します。
./device/linaro/dragonboard/installer/db845c/flash-all-aosp.sh
必要に応じて、USB フラッシュ モードで db845c をブートした後に次のスクリプトを実行することで、QDL ボードのリカバリを実行することもできます(DragonBoard のリカバリを参照)。
./device/linaro/dragonboard/installer/db845c/recovery.sh
カーネルのビルド
DragonBoard db845c の Android Generic Kernel Image(GKI)カーネル アーティファクトをビルドする手順は次のとおりです。
以下のコマンドを実行して、カーネルソースのクローンと、ビルド済みの Android ツールチェーンおよびビルド スクリプトのクローンを作成します。
mkdir repo-common
cd repo-common
repo init -u https://android.googlesource.com/kernel/manifest -b common-android-mainline
repo sync -j8 -c
rm -rf out
BUILD_CONFIG=common/build.config.db845c ./build/build.sh
${AOSP_TOPDIR}device/linaro/dragonboard-kernel/android-mainline/
内のオブジェクトをすべて削除し、out/android-mainline/dist/
から${AOSP_TOPDIR}/device/linaro/dragonboard-kernel/android-mainline/
にビルド アーティファクトをコピーします。そして、次のコマンドを実行して、ユーザー空間を再ビルドします。make TARGET_KERNEL_USE=mainline -j24
生成された boot.img と super.img を使用してデバイスをフラッシュします(ユーザー空間のコンパイルを参照)。
GKI カーネルをテストします。
最新の kernel_aarch64 ビルドを表示します。
[artifacts] で、イメージをダウンロードします。
イメージを gzip で圧縮します。
gzip Image
${AOSP_TOPDIR}/device/linaro/dragonboard-kernel/android-mainline/
にコピーします。AOSP を再ビルドし、新しい boot.img を使用してデバイスをフラッシュします(ユーザー空間のコンパイルを参照)。
HiKey 960 ボード
HiKey 960 ボードは Amazon と Lenovator から入手できます。
図 2. Lenovator の HiKey 960 ボード
ユーザー空間のコンパイル
HiKey 960 ボードに Android をダウンロードしてビルドするには、以下のコマンドを使用します。
以下のコマンドで、Android ソースツリーをダウンロードする
repo init -u https://android.googlesource.com/platform/manifest -b master
repo sync -j8
現在のベンダー パッケージをダウンロードする
./device/linaro/hikey/fetch-vendor-package.sh
ビルド
. ./build/envsetup.sh
lunch hikey960-userdebug
make -j24
ローカル イメージのインストール
スイッチ 3 をオンにして、Fastboot モードを選択します。詳細については、HiKey 960 スタートガイドをご覧ください。
ボードの電源を入れます。
Flash ローカル画像:
./device/linaro/hikey/installer/hikey960/flash-all.sh
スイッチ 3 をオフにし、ボードの電源をオフにして再度オンにします。
カーネルのビルド
HiKey960 の Android GKI カーネル アーティファクトをビルドする手順は次のとおりです。
以下のコマンドを実行します。
mkdir repo-common
cd repo-common
repo init -u https://android.googlesource.com/kernel/manifest -b common-android12-5.4
repo sync -j8 -c
rm -rf out
BUILD_CONFIG=common/build.config.hikey960 build/build.sh
${AOSP_TOPDIR}device/linaro/hikey-kernel/hikey960/5.4/
内のオブジェクトをすべて削除し、out/android12-5.4/dist/
内のカーネルビルドからビルド アーティファクトを${AOSP_TOPDIR}/device/linaro/hikey-kernel/hikey960/5.4/
にコピーします。DTB を連結します。
cat device/linaro/hikey-kernel/hikey960/5.4/Image.gz device/linaro/hikey-kernel/hikey960/5.4/hi3660-hikey960.dtb > device/linaro/hikey-kernel/hikey960/5.4/Image.gz-dtb
Android ユーザー空間をビルドする
lunch hikey960-userdebug
make TARGET_KERNEL_USE=5.4 HIKEY_USES_GKI=true -j24
新しいカーネルを使用してデバイスをフラッシュします(ユーザー空間のコンパイルを参照)。
Generic Kernel Image(GKI)カーネルをテストする
最新の kernel_aarch64 ビルドを表示します。
[artifacts] で、
Image
ファイルをダウンロードして${AOSP_TOPDIR}/device/linaro/hikey-kernel/hikey960/5.4/
にコピーします。イメージを圧縮して DTB を連結する
gzip ${AOSP_TOPDIR}/device/linaro/hikey-kernel/hikey960/5.4/Image
cat ${AOSP_TOPDIR}/device/linaro/hikey-kernel/hikey960/5.4/Image.gz ${AOSP_TOPDIR}/device/linaro/hikey-kernel/hikey960/5.4/hi3660-hikey960.dtb > ${AOSP_TOPDIR}/device/linaro/hikey-kernel/hikey960/5.4/Image.gz-dtb
- 新しいカーネルを使用してデバイスをビルドしてフラッシュします(ユーザー空間のコンパイルを参照)。
シリアル番号を設定する
ランダムなシリアル番号を設定するには、次のコマンドを実行します。
fastboot getvar nve:SN@16\_DIGIT\_NUMBER
ブートローダーが、生成されたシリアル番号を、androidboot.serialno=
を使用してカーネルにエクスポートします。このパラメータは、Android 11 以前ではカーネル コマンドラインから、カーネル バージョン 5.10 以降の Android 12 では bootconfig から渡されます。
モニター解像度を設定する
device/linaro/hikey/hikey960/BoardConfig.mk
の BOARD_KERNEL_CMDLINE
パラメータを編集して、video
設定を指定します。たとえば、24 インチモニターの場合は video=HDMI-A-1:1280x800@60
に設定します。
VIM3 ボードと VIM3L ボード
Khadas の VIM3 ボードと VIM3L ボードは、Khadas のウェブサイトから入手できます。
図 3. Khadas の VIM3 ボード
ユーザー空間のコンパイル
VIM3 ボードに Android をダウンロードしてビルドするには、以下のコマンドを使用します。
以下のコマンドで、Android ソースツリーをダウンロードします。
repo init -u https://android.googlesource.com/platform/manifest -b master
repo sync -j8
以下のコマンドで、ビルドします。
. ./build/envsetup.sh
lunch yukawa-userdebug
make TARGET_USE_TABLET_LAUNCHER=true TARGET_VIM3=true -j24
デフォルトでは、Android は 5.10 カーネルでビルドされています。カーネル 5.4 事前ビルドを使用するには、以下のコマンドを使用します。
make TARGET_USE_TABLET_LAUNCHER=true TARGET_VIM3=true TARGET_KERNEL_USE=5.4 -j24
VIM3L の場合は次のようにします。
make TARGET_USE_TABLET_LAUNCHER=true TARGET_VIM3L=true -j24
初期イメージのインストール
VIM3 フラッシュの手順に沿ってボードを USB アップグレード モードに設定します。
初期イメージを RAM にフラッシュします。
cd path/to/aosp/device/amlogic/yukawa/bootloader/
./tools/update write u-boot_kvim3_noab.bin 0xfffa0000 0x10000
./tools/update run 0xfffa0000
./tools/update bl2_boot u-boot_kvim3_noab.bin
- 権限に関する問題が発生した場合は、udev ルールのセクションを参照して適切な USB ルールを追加してください。
tools/update
が機能しない場合は、代わりに pyamlboot ツールを使用してボードをフラッシュします。
U-Boot が起動して fastboot を実行した後、次のコマンドを実行します。
fastboot oem format
fastboot flash bootloader u-boot_kvim3_noab.bin
fastboot erase bootenv
fastboot reboot bootloader
電源ケーブルを抜いて、もう一度差し込みます。
ボードがフラッシュされたばかりの U-Boot で起動し、Fastboot モードに移行します。
イメージのフラッシュ
Fastboot モードにします(手順については、前のセクションをご覧ください)。
すべての Android イメージをフラッシュします。
cd out/target/product/yukawa
fastboot flash boot boot.img
fastboot flash super super.img
fastboot flash cache cache.img
fastboot flash userdata userdata.img
fastboot flash recovery recovery.img
fastboot flash dtbo dtbo-unsigned.img
fastboot reboot
カーネルのビルド
VIM3 または VIM3L 用のカーネル アーティファクトをビルドする手順は次のとおりです。
追加のツールチェーンをダウンロードします。
git clone https://android.googlesource.com/platform/prebuilts/gas/linux-x86 ${AOSP_TOPDIR}/prebuilts/gas/linux-x86
カーネルソースのクローンを作成します。
# for 4.19 git clone https://android.googlesource.com/kernel/hikey-linaro -b android-amlogic-bmeson-4.19
# for 5.4 git clone https://android.googlesource.com/kernel/hikey-linaro -b android-amlogic-bmeson-5.4
# for 5.10 git clone https://android.googlesource.com/kernel/hikey-linaro -b android-amlogic-bmeson-5.10
# for 5.15 git clone https://android.googlesource.com/kernel/hikey-linaro -b android-amlogic-bmeson-5.15
ビルド変数をエクスポートします。
export PATH=${AOSP_TOPDIR}/prebuilts/clang/host/linux-x86/clang-r445002/bin:$PATH
export PATH=${AOSP_TOPDIR}/prebuilts/gas/linux-x86:$PATH
export PATH=${AOSP_TOPDIR}/prebuilts/misc/linux-x86/lz4:$PATH
export ARCH=arm64
export CROSS_COMPILE=aarch64-linux-gnu-
export LLVM=1
カーネルをビルドします。
cd hikey-linaro
make meson_defconfig
make DTC_FLAGS="-@" -j24
カーネルを圧縮し、build_artifacts を
${AOSP_TOPDIR}/device/amlogic/yukawa-kernel
にコピーします。lz4c -f arch/arm64/boot/Image arch/arm64/boot/Image.lz4
KERN_VER=4.19 # for 4.19 kernel
KERN_VER=5.4 # for 5.4 kernel
KERN_VER=5.10 # for 5.10 kernel
KERN_VER=5.15 # for 5.15 kernel
for f in arch/arm64/boot/dts/amlogic/*{g12b-a311d,sm1}-khadas-vim3*.dtb; do cp -v -p $f ${AOSP_TOPDIR}/device/amlogic/yukawa-kernel/${KERN_VER}/$(basename $f) done
cp -v -p arch/arm64/boot/Image.lz4 ${AOSP_TOPDIR}/device/amlogic/yukawa-kernel/${KERN_VER}/Image.lz4
Android ユーザー空間を再ビルド(ユーザー空間のコンパイルを参照)し、新しいカーネルをフラッシュします(イメージのフラッシュを参照)。
Qualcomm Robotics ボード RB5
Robotics ボード RB5 は 96boards.org から入手できます。
図 4. Robotics ボード RB5
ユーザー空間のコンパイル
RB5 に Android をダウンロードしてビルドするには、以下のコマンドを使用します。
以下のコマンドで、Android ソースツリーをダウンロードします。
repo init -u https://android.googlesource.com/platform/manifest -b master
repo sync -j8
現在のベンダー パッケージをダウンロードします。
./device/linaro/dragonboard/fetch-vendor-package.sh
AOSP をビルドします。
. ./build/envsetup.sh
lunch rb5-userdebug
make -j24
ローカル イメージのインストール
RB5 を Fastboot モード(Fastboot mode)でブートします。
次のコマンドを実行します。
./device/linaro/dragonboard/installer/rb5/flash-all-aosp.sh
必要に応じて、USB フラッシュ モードで RB5 をブートした後に次のスクリプトを実行することで、QDL ボードのリカバリを実行することもできます(RB5 のリカバリを参照)。
./device/linaro/dragonboard/installer/rb5/recovery.sh
カーネルのビルド
RB5 の Android Generic Kernel Image(GKI)カーネル アーティファクトをビルドする手順は次のとおりです。
以下のコマンドを実行して、カーネルソースのクローンと、ビルド済みの Android ツールチェーンおよびビルド スクリプトのクローンを作成します。
mkdir repo-common
cd repo-common
repo init -u https://android.googlesource.com/kernel/manifest -b common-android-mainline
repo sync -j8 -c
rm -rf out
BUILD_CONFIG=common/build.config.db845c ./build/build.sh
${AOSP_TOPDIR}device/linaro/dragonboard-kernel/android-mainline/
内のオブジェクトをすべて削除し、out/android-mainline/dist/
から${AOSP_TOPDIR}/device/linaro/dragonboard-kernel/android-mainline/
にビルド アーティファクトをコピーします。そして、次のコマンドを実行して、ユーザー空間を再ビルドします。make TARGET_KERNEL_USE=mainline -j24
生成された boot.img と super.img を使用してデバイスをフラッシュします(ユーザー空間のコンパイルを参照)。
GKI カーネルをテストします。
- 最新の kernel_aarch64 ビルドを表示します。
- [artifacts] で、イメージをダウンロードします。
イメージを gzip で圧縮します。
gzip Image
${AOSP_TOPDIR}/device/linaro/dragonboard-kernel/android-mainline/
にコピーします。AOSP を再ビルドし、新しい boot.img を使用してデバイスをフラッシュします(ユーザー空間のコンパイルを参照)。